3〜6歳、
年齢別の動き。
「うちの子、同い年の子より動きがぎこちない?」──その心配のほとんどは、月齢差と経験差です。
年齢別の運動発達の目安、家庭での伸ばし方、教室に通う意味を、幼児クラスの現場から解説します。
年齢は「順番」の目安。
速さは「経験」で決まる。
幼児の運動発達には順番があり、その順番はほぼ全員同じです。両足で跳べるようになってから片足で跳べるようになり、走れるようになってから方向転換ができるようになります。一方で「何歳でそこに着くか」には大きな個人差があり、その差を生む最大の要因は生まれつきではなく、その動きを経験した回数です。
だから「同い年の子より遅い」と感じたときにやることは、比べることでも焦ることでもなく、その動きを安全に経験できる回数を増やすことです。この記事では、年齢別の目安を表にしたうえで、家庭と教室でできることを分けて示します。
| 動き | 3歳 | 4歳 | 5歳 | 6歳 |
|---|---|---|---|---|
| 走る | 走れるが止まれない・曲がれない | 方向転換ができ始める | 合図で止まる、追いかけっこが成立 | 加速・減速を使い分ける |
| 跳ぶ | 両足で跳べる(低い所から跳び下りる) | 両足で前に跳ぶ、片足ケンケン数回 | 助走なしの幅跳び、着地で止まれる | 助走から跳ぶ、片足で連続 |
| 投げる・捕る | 下手投げ、両手で抱えて捕る | 上手投げの形が出る | 狙って投げる、大きなボールを捕る | 小さなボールを片手で捕り始める |
| バランス | 片足立ちが一瞬 | 片足立ち数秒、線の上を歩く | 片足立ち5秒以上、後ろ向き歩き | 細い所を歩く、目を閉じて立つ |
| 登る・ぶら下がる | 低い台に登る、短くぶら下がる | マットの山を登って下りる | 手足を使って壁状の物を登る | 雲梯・登り棒に挑戦 |
| 転がる | 横に転がる | 前転の形が出る(補助あり) | 前転ができる | 連続前転、後転に挑戦 |
※目安です。月齢(4月生まれと3月生まれでは1年近い差)と経験で前後します。「表より遅い=問題」ではありません。
「できない」の多くは、
前の段階が抜けている。
幼児の運動発達は、積み木のように下から積み上がります。たとえば「片足ケンケンができない」子の多くは、その前の「両足で跳んで、両足で着地する」がまだ安定していません。段階を戻すと、驚くほど早く次に進みます。
幼児パルクールのクラスで「技を教えない」のは、この階段を下から確実に積むためです。走る・跳ぶ・登る・転がる・ぶら下がるを遊びの中で繰り返すことが、そのまま階段の一段一段になります(幼児パルクールとは)。
3歳 ── 「怖くない」を
いちばん増やせる年。
3歳は、逆さや高さへの恐怖がまだ薄く、体も軽い。だから転がる・登る・ぶら下がる・跳び下りるを、いちばん抵抗なく経験できる年齢です。ここでの経験量が、5歳以降の「怖がらない子」を作ります。
- 家で ── 布団の山を登って転がる、クッションの上に跳び下りる、大人の腕にぶら下がる。1日10分
- 教室で ── マットの山、低い台、ぶら下がりの遊び。PK Guildのちびクラスは3歳6ヶ月から
- 気をつけること ── 「やらせる」は逆効果。見ているだけの日があっても、翌週動き出すのが3歳です
4歳 ── 止まる、
曲がる、片足の年。
4歳になると、走ることに「止まる」「曲がる」が加わり、片足で立つ・ケンケンが出てきます。同時に、少しずつ恐怖心も出始める年齢です。3歳で「怖くない」経験が少なかった子は、ここで慎重になることがあります。
- 家で ── 「だるまさんがころんだ」(止まる練習)、テープの一本道(バランス)、クッションの川を両足で跳ぶ
- 教室で ── サーキット(コース遊び)で、走る・跳ぶ・登る・くぐるを順番に。着地を柔らかいマットで繰り返す
- 気をつけること ── 「できる子」と比べ始める年齢。本人の「昨日」を基準に声をかける
5歳 ── 着地と、
順番の年。
5歳は、跳んだあとに着地で止まれるようになり、前転ができ、ルールと順番が分かる年齢です。運動の「質」が上がり始める一方で、恐怖心も本格的に出てくるので、安全な環境で「怖いけどやってみる」経験を積む価値が最も高い時期です。
- 家で ── 動物歩き(クマ・カエル・アザラシ)、片足立ち対決、前転(布団の上で)
- 教室で ── バランスの道、両足着地の練習、前転、少し高い台からの跳び下り。PK Guildでは5歳から通常クラス(Lv1駆け出し)にも進めます
- 気をつけること ── 怖がったら段階を下げる。「怖い」は正常で、外し方があります
6歳〜 ── 動きを
つなげる年。
6歳を過ぎると、助走から跳ぶ、登ってから跳び下りる、といった動きの連結ができるようになります。ここから小学校中学年にかけてが、いわゆるゴールデンエイジ(神経系がもっとも伸びる時期)の入口です。幼児期に増やした「引き出し」が、この時期に一気につながります。
- 家で ── 公園の雲梯・登り棒、縄跳び、ボールを投げて捕る
- 教室で ── 助走からのジャンプ、壁登り、動きを組み合わせたコース。技への憧れが出る時期なので、段階と環境が揃ってから
- 気をつけること ── 「バク転がしたい」と言い出す年齢。独学や布団の上での挑戦は止め、補助とマットのある場所へ(バク転は何歳から?)
ゴールデンエイジの詳しい話は小学生の運動神経は今からでも伸びる?で解説しています。
比べる相手は、
隣の子ではなく先月の本人。
- 月齢を考慮する ── 同じ学年でも、4月生まれと3月生まれでは約1年の差があります。幼児期の1年は発達の1段分です
- 「経験していない」と「できない」を分ける ── ぶら下がる場所のない子はぶら下がれません。それは能力ではなく経験の不足です
- 前の段階に戻す ── 片足で跳べないなら両足へ、前転ができないなら横転がりへ。戻るほど速く進みます
- 専門家に相談する目安 ── 表の目安から1年以上の遅れが複数の動きで続く、極端に転びやすい・疲れやすい場合は、かかりつけの小児科や保健センターに相談してください。運動教室は診断の場ではありません
3歳6ヶ月から、
階段を下から積む場所。
- 失敗しても痛くない ── 5m×6mの大型ピットマットとバネ床
- 順位も勝ち負けもない ── 課題は一人ひとりに合わせて調整
- 講師は全員が現役の実践者 ── スポーツ安全保険に加入
よくある質問。
3歳で運動教室は早すぎませんか?
早すぎません。3歳は逆さや高さへの恐怖が薄く、体も軽いので、転がる・登る・ぶら下がるをいちばん抵抗なく経験できる年齢です。「やらせる」のではなく「やりたくなる」環境があれば、始めどきです。
4歳ですが片足ケンケンができません。
その前の「両足で跳んで両足で着地する」がまだ安定していないことが多いです。段階を一つ戻して、クッションの川を両足で跳ぶ遊びを増やしてみてください。
5歳で前転ができません。問題ですか?
問題ではありません。前転は「逆さの感覚」と「体を丸める」の2つが揃って初めてできます。布団の上で横転がりから始め、教室では補助つきで形を体に入れます。
運動が苦手な親です。子どもも苦手になりますか?
なりません。幼児の運動能力を決めるのは、経験した動きの種類と回数です。親が一緒に動く必要はなく、動ける場所に連れて行くだけで十分です。
女の子は男の子より遅いですか?
幼児期の基礎動作に男女差はほとんどありません。差が出るとしたら経験の差です。
教室に通わないと運動神経は伸びませんか?
公園と家庭で十分に経験できるなら、通わなくても伸びます。ただ、現代の環境では「逆さになる」「高い所から跳び下りる」「ぶら下がる」を安全に経験できる場所が少ないため、それを補う場所として幼児クラスがあります。
焦らなくていい。
ただ、経験だけは増やす。
幼児期の運動は、才能の話ではなく回数の話です。今日の「登れなかった」は、来月の「登れた」の途中です。安全な場所で、転んで、登って、ぶら下がる回数を増やしてあげてください。それだけで、階段は上がっていきます。