パルクールの
技を、地図にする。
ヴォルト、プレシジョン、キャットリープ、ウォールラン。名前は聞くけれど、どれが簡単で、どれが難しくて、何から始めればいいのか分からない。
パルクールの技41個を6つの系統に分け、難易度つきで整理しました。最初に覚える順番まで、専用施設の現場からまとめます。
技は多く見えて、
動作は3つしかない。
パルクールの動画を見ると、無数の技があるように見えます。でも分解すると、やっていることは「跳ぶ」「越える」「登る」の3つです。そして、その全部を支えているのが「着地と受け身」。技の名前は、この組み合わせに付いたラベルにすぎません。
だから、技を覚える順番にも理由があります。派手な技から入るのではなく、土台(着地)から積む。土台があれば、新しい技は「今までの動きの組み合わせ」として短い時間で身につきます。
点から点へ、正確に跳び移る。距離より「狙った場所に止まる」精度が問われる。
手をついて障害物を越える。流れを止めずに走り抜けるための技術。
壁を蹴り上がり、縁をつかみ、体を引き上げる。壁やバーを道に変える。
この記事の難易度(★1〜★5)は、「専用施設で、講師の指導のもとで練習する場合」の目安です。同じ技でも、高さ・距離・床の硬さで難しさと危険度は大きく変わります。
最初に習うのは、
跳び方ではなく降り方。
パルクールで最初に練習するのは着地です。地味ですが、ここが甘いまま高さや距離を伸ばすと、ひざ・足首・腰を痛めます。逆に着地が身についていれば、ほかの技の失敗も「安全な失敗」になります。
| 技名 | 難易度 | どんな動きか |
|---|---|---|
| ランディング (着地) | ★1 | つま先側から静かに降り、足首・ひざ・股関節を順に曲げて衝撃を逃がす。「音を立てない」が合言葉 |
| 手つき着地 | ★1 | 深く沈んだ勢いを、前に手をついて逃がす。高さがあるときの基本 |
| PKロール (受け身) | ★2 | 肩から反対の腰へ、斜めに転がって衝撃を前への動きに変える。背骨を床に当てないのがコツ |
| バックロール | ★2 | 後ろに倒れたときの受け身。後方へ斜めに転がる |
| ドロップ | ★2〜 | 高い所から降りる動き。縁にぶら下がって高さを減らしてから降りるのが基本。高さで難易度が変わる |
着地と受け身は、パルクール以外でも役に立ちます。転んだときに手や頭を守れる体の使い方は、子どもの日常のケガを減らす力です。くわしくはカルチャー・競技・教育、3つのパルクールの教育の章にまとめています。
遠くへ、ではなく
狙った場所へ。
パルクールのジャンプは、走り幅跳びとは考え方が違います。大事なのは距離より精度。狙った場所にぴたりと止まれることです。細いレールや縁の上に着地する場面が多いためです。
| 技名 | 難易度 | どんな動きか |
|---|---|---|
| プレシジョン | ★1〜 | 両足で踏み切り、狙った点に両足で止まる。パルクールの代名詞。地面の線から始め、段差、レールへ進む |
| ランニング プレシジョン | ★2 | 助走をつけて片足で踏み切り、両足で止まる。距離が伸びるぶん、止まる技術が要る |
| ストライド | ★2 | 点から点へ、片足ずつ大股で渡っていく。走りながらのリズム感が問われる |
| プライオ | ★3 | 着地の反動をそのまま使って、止まらずに次のジャンプへつなぐ |
| キャットリープ (アームジャンプ) | ★3 | 壁に向かって跳び、足を先に壁に当ててから縁を手でつかんでぶら下がる。足が届かない距離を越える技 |
| キャット トゥ キャット | ★4 | ぶら下がった姿勢から壁を蹴り、向かいの壁の縁をつかむ |
| 180°キャット | ★4 | ぶら下がった姿勢から半回転して、後ろの壁へ跳び移る |
ヴォルトの違いは、
手足の順番だけ。
ヴォルトは、手をついて障害物を越える技の総称です。パルクールらしさがいちばん出る系統で、種類も多い。ただし違いは「どの向きで、手と足をどの順に通すか」だけです。
| 技名 | 難易度 | どんな動きか |
|---|---|---|
| ステップヴォルト (セーフティ) | ★1 | 片手と反対の足を障害物に乗せ、もう片方の足を間に通して越える。最初に習うヴォルト |
| レイジーヴォルト | ★2 | 障害物に対して斜めに入り、内側の手をついて両足を横に流して越える。力がいらず、流れがきれい |
| スピードヴォルト | ★2 | 走る勢いのまま片手をつき、体を横に倒して越える。ハードルに手を添える感覚。速さ重視 |
| ターンヴォルト | ★2 | 両手をついて越えながら半回転し、障害物の向こう側に向き合って降りる。高い所から安全に降りる入口 |
| ゲートヴォルト | ★2 | 高い柵にお腹を乗せ、向こう側の低い位置をつかんで体を回して越える |
| リバースヴォルト | ★3 | 両手をつき、背中側から1回転しながら越える |
| コングヴォルト (モンキー) | ★3 | 正面から両手をつき、両足を腕の間に通して越える。跳び箱の「閉脚跳び」に近い。パルクールの花形 |
| ダッシュヴォルト | ★3 | 足から先に跳び越え、空中で後ろ手に障害物を押す。コングと逆の順番 |
| キャッシュヴォルト | ★4 | コングで入り、ダッシュで抜ける。幅のある障害物向けの合わせ技 |
| ダブルコング | ★4 | 長い障害物の上で、手を2回ついて越えるコング |
| コング トゥ プレシジョン | ★4 | コングで越えた先の、狙った点に両足で止まる。ヴォルトとジャンプの合成 |
コングヴォルトは、跳び箱が得意な子ほど早く身につきます。手で体を支えて腰を上げる感覚が同じだからです。関連して、跳び箱のコツとハンドスプリングのコツも参考になります。
壁は、行き止まり
ではなくなる。
パルクールを始めると、壁の見え方が変わります。登れる、蹴れる、つかめる。壁の技は、脚の力と腕の引く力を両方使うので、全身の体力づくりとしても優秀です。
| 技名 | 難易度 | どんな動きか |
|---|---|---|
| ウォールラン | ★2〜 | 助走から壁を1〜2歩蹴り上がり、上の縁をつかむ。前への勢いを上向きに変えるのがコツ |
| クライムアップ | ★3 | 縁にぶら下がった状態から、体を引き上げて壁の上に乗る。腕の力だけでなく、足で壁を蹴る |
| ティックタック | ★2 | 壁を片足で蹴って、その反動で横や斜めに跳ぶ。障害物を越えるきっかけ作りに使う |
| ポップヴォルト | ★3 | 壁を一歩蹴って高さをかせぎ、そのままヴォルトで上に乗る・越える |
| 壁の間の 突っ張り登り | ★3 | 狭い壁と壁の間で、手足を突っ張って体を支え、登る |
| ウォールスピン | ★4 | 壁に両手をついて、横向きに1回転する。ここからフリーランニング寄りの技になる |
止まれる人が、
いちばん速い。
バランスとバーの技は地味に見えますが、上級者ほど時間をかける系統です。細い足場で落ち着いていられること、ぶら下がって自分の体を振れること。これが、ほかの全部の技の安定感を決めます。
| 技名 | 難易度 | どんな動きか |
|---|---|---|
| バランス (レールウォーク) | ★1 | レールや縁の上を歩く・止まる。低い位置から始める |
| キャットバランス | ★2 | レールの上を四つんばいで進む。重心が低く、長い距離でも安定する |
| レールスクワット | ★2 | レールの上でしゃがんで立つ。着地で止まる力を直接きたえる |
| アンダーバー | ★2 | バーの下のすき間を、バーをつかんで足から滑り抜ける |
| ラシェ (スイング) | ★3 | バーにぶら下がって体を振り、その勢いで前へ跳ぶ。狙った所に着地できれば一人前 |
| バー トゥ バー | ★4 | スイングで跳び、次のバーをつかむ |
| マッスルアップ | ★4 | ぶら下がった状態から、バーの上まで体を引き上げる。クライムアップのバー版 |
宙返りは、
パルクールの技?
バク宙や壁を使った宙返りは、正確にはフリーランニングと呼ばれる表現寄りの系統です。今はパルクールと一緒に語られることがほとんどで、競技のフリースタイル種目でも採点の中心になっています。ここは、アクロバットの技術がそのまま土台になります。
| 技名 | 難易度 | どんな動きか |
|---|---|---|
| パームスピン | ★3 | 壁や台の上に手をつき、手を軸に体を水平に1回転させる |
| サイドフリップ | ★4 | 横向きの宙返り。走りの流れに入れやすい |
| ウォールフリップ | ★4 | 壁を蹴り上がって、その反動で後方宙返りをする |
| フロントフリップ/ バックフリップ | ★4 | 前宙・バク宙。段差の上から、あるいは障害物を越えながら行う |
| ゲイナー | ★5 | 前に進みながら後方に宙返りする |
宙返り系の技の全体像は、アクロバット技一覧に別でまとめています。バク宙までの階段はバク宙のコツ、その土台になるバク転はバク転のコツへ。
最初の7つは、
この順番で。
41個を一度に覚える必要はありません。最初の7つが身につけば、「パルクールをやっている」と言える動きになります。順番にも意味があります。
この7つの次は、コングヴォルト、キャットリープ、クライムアップ、ラシェ。そこまで来ると、技を止まらずにつなげる「フロー」が練習の中心になります。くわしくはパルクールのフローとはへ。
同じ技でも、
場所で危険度が変わる。
難易度の★は、あくまで技そのものの難しさです。実際の危険度は、高さ・距離・床の硬さ・見てくれる人がいるかで決まります。★1のプレシジョンでも、高い塀の上でやれば危険です。★3のコングヴォルトでも、低い台とマットなら、小学生が安全に練習できます。
- 動画のまねを、いきなり外でしない ── 動画に映っているのは、何年も積んだ人の「本番」。その手前の何百回の練習は映っていない
- 新しい技は、低く・近く・柔らかい所から ── 高さと距離は、成功率が上がってから少しずつ足す
- 公園や街の設備は、使っていい場所か確認する ── 立ち入りや使用が禁止されている場所では練習しない
- 最初は、見てくれる人のいる環境で ── 自分の動きのクセは自分では見えない。土台の段階ほど、外からの目が効く
PK Guildは、14m×9mのバネ床と5m×6mの大型ピットマットを備えた専用施設です。子どものクラスはレベル制で、着地と受け身から順番に進みます。高校生以上の方は大人のパルクール、自分のペースで練習したい経験者の方はフリトレ(施設一般開放)へ。
技についての疑問に、
答えます。
パルクールでいちばん簡単な技は何ですか?
ランディング(着地)、バランス、プレシジョン、ステップヴォルトの4つです。どれも低い段差や床の線から始められ、運動が苦手な方や小さな子どもでも初日から練習できます。
いちばん難しい技は何ですか?
技そのものより、「高さ・距離・つなぎ方」で難しさが決まります。単体の技では、ゲイナーなどの宙返り系や、キャット トゥ キャット、ダブルコングなどが上級の目安です。上級者は、これらを止まらずにつなげて動きます。
ヴォルトとは何ですか?
手をついて障害物を越える技の総称です。ステップヴォルト、スピードヴォルト、レイジーヴォルト、コングヴォルトなど10種類ほどがあり、違いは体の向きと、手足を通す順番です。
バク宙ができないと、パルクールはできませんか?
できます。バク宙などの宙返りはフリーランニングと呼ばれる系統で、パルクールの基本(着地・ジャンプ・ヴォルト・クライム)とは別の枝です。宙返りをまったくやらずに続けている人も多くいます。
子どもは、どの技から始めますか?
着地とバランスからです。PK Guildのクラスはレベル制で、土台から順番に進みます。3歳6ヶ月から参加できるちびクラスでは、跳ぶ・登る・ぶら下がる・転がるといった動きを遊びの形で経験します。
技は独学でも覚えられますか?
着地やバランスなど土台の技は、低い場所なら自分でも練習できます。ただ、受け身、ヴォルト、壁の技、宙返りは、最初の形を間違えるとケガにつながりやすく、クセも残ります。最初だけでも、マットのある環境で、見てもらいながら覚えるのがおすすめです。
体験では何をしますか?
体験は、実際のクラスにそのまま参加する形です(現在無料)。見学だけでも大丈夫です。持ち物は動きやすい服装と飲み物だけです。