ハンドスプリング
のコツは、押す。
立てない、起き上がれない、腕が曲がる、横に流れる。ハンドスプリングができない理由は「勢いが足りない」ではありません。
跳び箱とマット、それぞれの立ち方、5段階の練習順、症状から原因を逆引きする診断表、家でできる練習とできない練習を、専用施設の現場から解説します。
立てないのは、
勢い不足ではない。
ハンドスプリング(前方転回)のコツは、①手をついた瞬間に肩で床を「突き放す」こと、②倒立の形を「通過」すること、③着地まで目線を手に残して、胸から反ること、の3つです。立てない人の多くは、助走を速くして解決しようとします。しかし助走が速いほど、肩で押せていない体は横に流れ、頭から落ちます。ハンドスプリングは「走る技」ではなく、「倒立で跳ねる技」です。
この記事では、ハンドスプリングを「倒立→ブリッジ落ち→高い所から低い所へ→補助つき平地→補助なし」の5段階に分け、各段階の合格ライン、跳び箱の転回とマットの転回の違い、症状別の診断表、子ども・小学生・大人の進め方、家でできる練習とやってはいけない練習、そしてハンドスプリングがつながる技(前宙・連続技)までを解説します。
| 段階 | 合格ライン | 家でできる? |
|---|---|---|
| 1 倒立(壁) | 壁倒立で肩を押し、体を棒にして20秒。目線は手の少し前 | できる |
| 2 倒立→ブリッジ落ち | 補助つきで倒立からゆっくりブリッジに降り、胸から反る形を覚える | マット+大人がいれば |
| 3 高い所から低い所へ | 台の上から手をつき、下のマットに立つ。「肩で突き放す」感覚を作る | できない(施設で) |
| 4 補助つき平地 | 補助者が腰と肩を支え、平地で倒立を通過して立つ | できない(施設で) |
| 5 補助なし | 助走→ホップ→着手→突き放し→着地。膝を曲げずに立つ | ピットかマットのある場所で |
- 失敗しても痛くない ── 5m×6mの大型ピットマットとバネ床
- 順位も勝ち負けもない ── 課題は一人ひとりに合わせて調整
- 講師は全員が現役の実践者 ── スポーツ安全保険に加入
走る、つく、
突き放す、反る。
ハンドスプリングは1秒ほどの技ですが、中身は4つの局面に分かれます。どこで失敗しているかが分かれば、直す場所は1つに絞れます。立てない人のほとんどは、3番目の「突き放す」が抜けています。
- 1 助走・ホップ ── 助走は3〜5歩で十分。最後に小さく跳ぶ(ホップ)。高く跳ぶと前に進む力が消えるので、低く・前へ。手は「遠くの床」に置きにいく
- 2 着手 ── 肩幅で手をつき、振り上げた足が頭の上を通る。ここで一瞬、倒立の形(手首・肩・腰・足首が一直線)を通過する。通過しない体は、横に流れる
- 3 突き放す ── 倒立を通過した瞬間、肩をすくめるように床を押して、手を床から離す。この「押す」が体を空中に上げ、足が着地する時間を作る。腕の力ではなく、肩の突き放し
- 4 反って立つ ── 目線は手を離した後も床に残す。腰ではなく胸から反り、足の裏全体で着地。膝を深く曲げると起き上がれない。腰を前に出して立つ
高い所から低い所へ。
順番を守れば、痛くない。
ハンドスプリングを平地でいきなり練習すると、突き放しが抜けたまま頭から落ちる経験を積んでしまい、体が怖がって縮こまります。「高い所から低い所へ」の段階を挟むと、突き放さなくても立てる状態から始められるので、恐怖なしに肩で押す感覚を作れます。
段階を上げる目安は「合格ラインを3回連続で越えたら次へ」。1回できても、翌回できなければ体に入っていません。特に段階3(高い所から低い所へ)を長めに取ると、平地での成功が早くなります。


症状から、
原因を逆引きする。
| 症状 | 本当の原因 | 直し方 |
|---|---|---|
| 立てない(尻もちをつく) | 突き放しがない/着地で膝を深く曲げている | 段階3「高い所から低い所へ」に戻る。着地は腰を前に出し、膝は軽く |
| 起き上がれない(ブリッジで止まる) | 目線が早く前に来て、肩が手の真上から抜けている/腰から反っている | 倒立→ブリッジ落ちで「目線を手に残す」「胸から反る」を作り直す |
| 腕が曲がる・頭がつく | 肩で押していない(腕力不足ではない)/手を近くにつきすぎて体重が一気に乗る | 壁倒立で「肩を耳に近づけて押す」。手は遠くの床に置きにいく |
| 横に流れる・ねじれる | 倒立を通過していない/手のつき方が左右でずれている/助走が速すぎる | 助走を3歩に減らし、着手で一瞬倒立を通る。手は肩幅・指は前 |
| 足が開く・膝が曲がる | 振り上げが弱く、両足が揃う前に着地している/怖くて足を引いている | 倒立で足を締める練習。段階3で「足を揃えてから降りる」 |
| 怖くて手がつけない | 頭から落ちた経験がある/落ちても痛くない環境がない | ピットマットか厚いマットで段階3から。恐怖は環境で消す |
「助走を速くすれば立てる」は、ほとんどの場合で逆効果です。速い助走は、突き放しのない体を横に流し、頭から落とします。立てないときは助走を減らし、段階を1つ戻してください。ハンドスプリングは勢いの技ではなく、倒立で跳ねる技です。
跳び箱は、
「突き放し」だけの技。
跳び箱のハンドスプリング(前方倒立回転跳び)は、学校の体育で跳び箱の発展技として扱われます。マットの転回と同じ4局面ですが、決定的に違うのは、跳び箱の上で倒立を通過し、跳び箱を「突き放して」空中で反り、跳び箱より低い床に着地することです。つまり跳び箱の転回は、段階3「高い所から低い所へ」そのもの。突き放しさえあれば、マットの転回より立ちやすい技です。
| 項目 | 跳び箱の転回 | マットの転回 |
|---|---|---|
| 踏み切り | ロイター板で両足踏み切り。上に跳んでから手をつく | ホップから片足ずつ振り上げ。低く前へ |
| 着手 | 跳び箱の奥(遠く)に手をつく。手前につくと回転が足りない | 肩幅で、遠くの床に。倒立を通過 |
| 突き放し | 最重要。跳び箱を押して体を上に運ぶ。ここが技のすべて | 倒立を通過した瞬間に肩で押す |
| 着地 | 跳び箱より低い床なので、空中で反る時間がある。立ちやすい | 同じ高さに着地するので、突き放しが弱いと立てない |
| 怖さ | 跳び箱に頭を打つ不安/高さの不安 | 頭から落ちる不安 |
| 先に練習するなら | 台上前転→台上で倒立(補助)→転回 | 壁倒立→ブリッジ落ち→高い所から低い所へ |
跳び箱の転回で「頭を打ちそうで怖い」子は、跳び箱の奥に手をつけていません。手前に手をつくと、回転が足りずに頭が跳び箱に近づきます。踏み切りで「上に跳んでから、遠くに手をつく」。跳び箱そのものが跳べない場合は、先に跳び箱が跳べない小学生へで「支持」の土台を作ってください。
子どもは「怖くない順」、
大人は「反れる順」。
| 年代 | 特徴 | 進め方 |
|---|---|---|
| 3〜6歳(幼児) | 体が軽く反りやすいが、肩で支える力はまだ弱い | ハンドスプリングは求めない。壁倒立・ブリッジ・台からの前転を遊びで。「押す」感覚は手押し車で |
| 小学生 | 見て真似る力が高く、形が入るのが速い。頭から落ちた経験が恐怖として残りやすい | 5段階を素直に。段階3(高い所から低い所へ)を長めに。平地はピットかマットで |
| 中高生 | 体が大きくなり、「見られたくない」心理が出る。力で解決しようとする | 助走を減らし、突き放しに集中。倒立の静止時間を伸ばして自信を作る |
| 大人 | 肩と背中の可動域が律速。ブリッジで止まりやすい | 肩のストレッチ・ブリッジを毎回。倒立→ブリッジ落ちで反る形を作ってから段階3へ |
小学生に教えるときの声かけは、「もっと勢いをつけて」ではなく「肩で押して」、「起き上がって」ではなく「手を見たまま胸を出して」、「足を揃えて」ではなく「天井を蹴って」。子どもは言われた場所を意識するので、原因の場所を指してください。
家では「倒立と反り」まで。
跳ねるのは、施設で。
- 壁倒立 20秒×3(2分) ── 肩で押す・お腹を締める・目線は手の少し前。反っていないか横から見る(または動画)
- ブリッジ 10秒×3(1分) ── 手と足を近づけ、肩を手の真上に。肘が外を向かないように。立ち上がりまでできれば段階2が速い
- 手押し車 5m×3(1分) ── 肩で床を押しながら進む。「押す」が弱い子に最も効く。幼児は遊びで
- ホップの練習(1分) ── 3歩走って、低く小さく跳び、両手を遠くに出す(床にはつかない)。リズムだけを作る
- 降り方(毎回) ── 倒立から前転で降りる練習。前に倒れたときの安全装置
家でやってはいけないこと:布団やベッドの上での転回(手が沈んで手首を痛め、着地で首を痛める)、平地でいきなり跳ねる練習(突き放しのない体は頭から落ちる)、補助者なしでの「高い所から低い所へ」。ハンドスプリングは家では「倒立と反り」まで、跳ねる段階はピットマットと補助のある場所で積んでください。家で倒立とブリッジを毎日5分やっている子は、施設に来たときの進みが明らかに速いです。
前方系の技は、
全部ここから点火する。
ハンドスプリングは、前方系の技の「点火装置」です。助走の勢いを回転に変える感覚と、突き放しで体を空中に上げる感覚は、そのまま前宙や連続技に使われます。後方系の点火装置がロンダートなら、前方系はハンドスプリングです。
「跳ねて、落ちる」を、
痛くない場所で。
PK Guild(大阪市鶴見区横堤・横堤駅徒歩3分)は、パルクールとアクロバットの専用施設です。5m×6mの大型ピットマットと14m×9mのバネ床があり、「高い所から低い所へ」「ピットに向かって跳ねる」といった段階を、痛い思いをせずに積めます。倒立・側転・ハンドスプリング・ロンダートは、通常クラスの段階の中で扱います。
- 失敗しても痛くない ── 5m×6mの大型ピットマットとバネ床
- 順位も勝ち負けもない ── 課題は一人ひとりに合わせて調整
- 講師は全員が現役の実践者 ── スポーツ安全保険に加入
よくある質問。
ハンドスプリングのいちばんのコツは?
手をついた瞬間に肩で床を突き放すこと、倒立の形を通過すること、目線を手に残して胸から反ること。この3つです。助走の速さではなく、倒立で跳ねる技です。
立てません。尻もちをつきます。
突き放しがないか、着地で膝を深く曲げています。「高い所から低い所へ」の段階に戻り、肩で押すと体が浮く感覚を作ってください。着地は腰を前に出して、膝は軽く。
ブリッジの形で止まって起き上がれません。
目線が早く前に来て、肩が手の真上から抜けています。倒立→ブリッジ落ちで「目線を手に残す」「腰ではなく胸から反る」を作り直してください。大人は肩の可動域も原因になります。
跳び箱のハンドスプリングとマットのハンドスプリングはどちらが先ですか?
突き放しの感覚は、落差のある跳び箱の方が作りやすいです。ただし跳び箱そのものが怖い子は、マットで「高い所から低い所へ」の段階から入ります。どちらも倒立が土台です。
子どもは何歳からできますか?
幼児期は壁倒立・ブリッジ・手押し車を遊びで行い、ハンドスプリングそのものは小学生から段階的に進めるのが目安です。年齢より「倒立で肩を押せるか」が判断基準です。
家で練習してもいいですか?
壁倒立・ブリッジ・手押し車・ホップのリズムまでは家でできます。跳ねる段階(高い所から低い所へ・平地)は、ピットマットと補助のある場所で。布団の上での転回は手首と首を痛めるのでやめてください。
ハンドスプリングができると何につながりますか?
前宙・ハンドスプリング→前宙・連続転回といった前方系の技すべての入口です。「倒立を通過して突き放す」はロンダートやバク転とも共通の土台になります。